メモ書き

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【感想】欲望の資本主義 特別編 「コロナ2度目の春 霧の中のK字回復」

欲望の資本主義 特別編 「コロナ2度目の春 霧の中のK字回復」という番組の感想です。

毎年、元旦に放送されている経済番組のシリーズで、各国の著名な経済学者などが登場し、今後の展望を話す内容……かな? 哲学者なども出ますけど。

年初から、なかなか重い気持ちにさせられるものの、知識欲をかき立てられるので、忘れなければ見ています。

で、今回は特別編。
2021年 最初の欲望の資本主義も、感染症を扱っていましたが、より焦点を当てた感じ。
というか、続編。

正直、年初の番組は突貫工事っぽいというか、なんとか作った感がして、ここ数年でもっとも内容が薄かった気が……。
パンデミックの余波で、調整がつかなかったんでしょうかね、予定していた出演者と。

そんな印象があります。

* * *

で、今回の特別編。

ポイントは、ワクチン接種が可能な国、難しい国で分かれる経済の二極化。
立ち直りが早い業種と、低迷していく業種。
そういった上がる側と、下がる側がある「K字回復」の話。

全部が底から上がるなら「V」の字の回復ですが、上がるのと下がるのがあるから「K」ってこと。

この辺の見解は他でも見られましたね。
新興国への投資を控え、接種が進む国への集中へ……。
ドル円だって、年初の円高から、ドル高に加速してますし……。
最近は揺れ動いているけど。

為替は通貨供給量のバランスだと言っても、それで買える物を考えれば、ね?
米株を買うには、ドルは要るもの。

* * *

そんな番組の感想ですが、端的に言えば眠たい。
何度か寝そうになりました。

株をやり始めてから、この番組が退屈になってきています……。

何でしょうね。

「経済がわかるなら、投資で名をあげてみろよ。
 まずは、それからだ」

……と言ってしまえば、肩書きだけの出演者に見えなくもない。
大半の経済学者は。

特に気になったのは、日本の出演陣。
やたらと「バブル」という単語にする……。
「これはバブルのあだ花」「バブル崩壊の兆し」みたいなニュアンスばかり。
まるで、「暴落」という見出しをつければ、危機感を煽られた層が雑誌を買うと思ってる出版社のよう。
それとも、制作サイドに言わされているんでしょうかね……。
暴落の話をするなら、利上げタイミングに触れてほしい。

それを抜きにしても、ファンドとしては「上がってるときに売って、そのあとに下がるなら問題ない。でも、売った後も上がるのであれば、なぜ売ったと客にドヤされる。しかし、バブルが弾けて暴落するなら、客も仕方ないと言う」から、みんな持ち続けるチキンレースをしていると言っていました。

え~って感じ。

これがプロの言葉なのかと。

株式相場格言の一つで「頭と尻尾はくれてやれ」というものがあるんだけど……。
あと、下がるんなら空売りすればいいし、それを売った後に仕掛けてもいいでしょうに。

あるいは、買いでも売りでもヘッジすれば……。

他に耳障りだったのは、マスコミが大好きな「業績に見合っていない相場」ってやつ。

これも言わされてるの?
金融相場なら、業績関係ないでしょ?

種を植えたばかりの畑を見て、「収穫ゼロだから無価値だ。こんな畑に値を付けるのは愚かだ」って言うの? 違うでしょ?
今後の収穫を見込んで、その量に見合った値付けをする。今は、その段階じゃないの?

それに、株価が上がってるんじゃなくて、大量に通貨を増やしたことで、通貨の価値が下がって別の資産が上がっているように見えているだけかもよ。
食品のステルス値上げみたいにさ。
「金の価値は変わらない」のに その価格が上下するのは、「お金の価値が変わる」からという話。

* * *

バブルの狂騒として持ち出されたのは、ゲームストップとアルケゴス破綻。
後者は、そこまで深入りしていないというか、入れなかったんでしょうね。制作時期的に。
放送一ヵ月前くらいの出来事だと、検証も不十分でしょうから。

この辺から、海外の発言者と、日本の発言者で、見方が違うのは面白い。
もはや、日本の「バブル」連呼が前座で、そのあとに真打ち登場という構成。

とはいえ、SDGs投資の話を持ってきて、よろしくない分野には投資しない流れを話しても、SPAC(特別買収目的会社)がスルーなので「何だかなぁ~」と。

ギャンブルなどの思わしくない投資対象は、SPACで裏口上場ってのが流行ったんだから、絡めて話してもいいようなもの。
Draftkings Inc とかね。

で、最終的には米中対立と、そのはざまで揺れる国。
米国における過去の誤った対中政策。
民主主義がもたらすものは何かとか……。

心を排した経済学と、そうじゃない経済学。
人は合理的には動かないのに、経済学上の人間は合理的な人間の思考で構成されている。
ゆえに、より利益が得られる場所に、迷いなく移ると想定している……。例えば、それまで従事していた仕事を捨て、一から始めるのも抵抗がないみたいに。

効率的市場仮説と、適応的市場仮説。

Adaptive Markets 適応的市場仮説: 危機の時代の金融常識

イノベーションを生み出すのは、自由がある民主主義。
権威主義のもとでは、急速な成長は見込めるが、他に追いつくところまで。
新たな一歩は刻めない……みたいな?
おそらく、半分は願望が入っているでしょう。
自分たちが信じ続けてきた民主主義が、権威主義に負けるはずがないという。

* * *

日本側の話として興味深かったのは、コロナ禍で倒産件数が思ったほど増えていないのは、ゾンビ企業になっているからというもの。

帝国データバンクの人が街を歩いて調査し、事業所跡を訪れてチェックしてまわる……。
内装業者は、消えていた。
クリーニング屋も、多く潰れている。

だけど、会社としては残っているから、倒産ではない。

日本の支援は、事業者単位。
それを受け、弱者は救済すべきだが、その弱者が所属している弱い企業を救うことはない。
みたいな意見もありました。

組織のために人がいるのではなく、人のために組織はあるのだ理論みたいですね。

ただ、健康保険や労働組合が会社単位なように、この国では会社が個人を束ねる存在。
会社を失えば、弱い個人はさらに守りにくくなる。
そういう側面があるんだよね。

逆に、加入する健康保険を自分で選ぶアメリカでは、医療費が高くて……みたいなのも、そう簡単には変えられない。
その辺を抜きにして、個人優先だって叫んでもねと思いました。

最終的には、なんかうまくまとめようとして、まとまってない感じ。
資本主義の行きつく先は? よりベターな選択は?

こういう最後の問いかけは、「俺たちの戦いはこれからだ」みたいなもの。
そんなに意味はないでしょうし、考えてもいないでしょう。

中国の成長には「中所得国の罠」とか……。
この辺は、後にしよう。
「ハイプ・サイクル」にも触れようと思ったけど。


これだけの感想を書けるんだから、眠くなりながらも、見る価値はあったのかな。私には。