政治の実像は一つです、少数による多数の支配。
全体を100として、そのうち51を占めれば多数による支配を主張できます。
ところが、その多数派も幾つもの派閥に分かれています。
すなわち、その51のうち26を占めれば、100という全体を支配できます。
上記の文章は、「銀河英雄伝説 41話(2期)」のハイドリッヒ・ラングが言った台詞を元にしています。
最大の政党が51の議席を持つ。
その政党では、A派が26議席、B派が25議席。
政党内で多数決を行えば、最大派閥のA派が、その政党の意見となる……。
ここに、26による100の支配が完成する。
そういう話。
何ヶ月か前に、SNS上で似たようなことを書き、バズっていた人が居ました。
それを見て「あぁ、ラングがいる」と思ったのですが、同じような感想を抱く人を見なかったので、少し寂しく……ってことは、どうでもいいですね。
この話を持ち出したのは、タイトルにある「無党派層が多いと安心する理由」を書くため。
あくまで、自分の気持ちの整理です。
* * *
何というか、頑なに支持対象を変更しない人が増えると、ロクなことにならないというのが個人的な意見です。
そういう意味では、無党派層が多いのは「票の揺れ」が大きくていいなと。
それはそれで、揺るぎない基盤からは縁遠くなりますが、揺るぎないというのは、それだけ硬直化しているということ。
「変化」の時代を生きるのであれば、そんなデメリットは背負いたくない……みたいな?
先のラング主張の続きになりますが、多数派A派の中にも「ひょうきん族」と「謹厳族」とあり、「一生、ひょうきんでいます」という人が10議席を占める場合、派閥内政治は「確定された10議席」を元に動くでしょう。
「あそこに行けば、間違いなく10という数がある」という事実は、ちょっと謹厳寄りな人であっても、自分の立場を善くするために「主張を偽装する」には十分な理由になるでしょう。
結果、頑なな支持者の誕生は、揺れを廃してしまい、謹厳族の弱体化を招くのです。
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これと同じことが、票を入れる側にも起こり得る……。
もっともありそうな例は、落選させたい誰かがいたとして、その対抗馬に誰を選ぶのかという作業になった場合。
同じ新人であっても、確実な支持層を持っていそうな候補Cと、特に後ろ盾がないDだと、「確実に落選させたい層」は前者を選びやすい。
その確実な支持層というのが、人によっては拒絶反応を起こす集団でなければ……。
確実な支持層と聞いて、宗教を思い浮かべた人は、私と感性が近い人かもしれません。
宗教って、政治との相性がいいんですよね。
どこの国でも、政治に宗教が絡んできますし……。
政教分離?
「国家と宗教」の分離であって、「政治と宗教」の分離ではないそうですよ。
例えば、「日本国の宗教は、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教とする」というのはダメって話で。
こういうのって、統治するのに「神」が必要だった時代から受け継いできた「負の遺産」かも。
王「俺の作ったルールだ」
民衆「じゃ、王が代わったら、変わるんでしょ?」
王「神からもたらされたルールだ」
民衆「不変のルールに違いない。守らねば」
そのときは、それでよかったかもしれません。
でも、今となっては肥大化した「神」というシステムが邪魔。
「神」というシステムを建前とし、様々な神を尊重した上で、「代理人」というシステムを機能させた。
「みんな」で話し合うわけにもいかないので、代表者を話し合いの場に送り込み、新たなシステムを構築する……。
でも、その「代理人」というシステムですら、「神」というシステムの土台の上に構築したせいで、配慮しなきゃアップデートすら叶わない。
場合によっては、その「神」というシステムを利用し、現状のシステムに介入してくる連中がいる。
脆弱性を見つけたクラッカーのように……。
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なんか、書いて整理したいことからズレてしまった。
え~っと、頑なな支持者の話に戻します。
頑なな支持者の誕生は、いつ起こるのか……。
宗教への入信、支持者からの勧誘、そして自分の主張への批判。
パッと思いついたのは、3つ。
宗教への入信は、そのまま。
よく狙われるのは、不幸に見舞われた人。
救いの手を求めている人を救うことで、自分の仲間に引き入れる。
救済と思わせ、実際には勧誘でしかない。
困っている人は判断力が低下しているでしょうし、誰かの支えも欲しているでしょう。
通常運転な人を誘うより、可能性は高くなるというもの。
詐欺も、似たような感じ。
強い悲しみが伴う葬儀に、宗教的儀式を持ち込んだあたりに、商才を感じますね。
こう書くと「それで救われた人もいる」「信教の自由」という言葉が返ってくるでしょう。
こういう返しがあるのが、宗教の強みですよね。
支持者からの勧誘は……。
そう書こうとしたところで、どうにも大学での勧誘が離れない。
アンケートやサークル勧誘を装って、実は学籍がない中高年が“学生組織”に誘いこむという……。
で、そのままホイホイとついていけば、セミナーと称する洗脳が始まって、頑なな支持者が誕生する。
これに近いかもね。
最後の「自分の主張への批判」は、ネット社会になって増えた気がします。
どこかの政党を支持し、その旨を発言。
当然、発言に対し、アンチが沸く……。
アンチの批判を攻撃と捉え、反撃したくなるのが人情。
反撃するには、その政党の良い面を見て、アピールしなくてはいけません。
攻撃に繋がらない「政党の悪い面」には目をつむるようになり、良い面や良い解釈ばかりをするようになって、いつの間にやら頑なな支持者。
こう書くとアレですが、かつて野党を持ち上げ、政権を“取らせてしまった”メディアの中には、引っ込みがつかなくなって、今も“応援”しちゃってるところもあるのでは……と。
もし、本当にそうだったとしても、時が経てば思い出として美化されるもの。
今がダメになると「実は、あの頃の方が良かったんじゃないか」という幻想を……。
ほら、昔は良かったってやつですよ。
データで見ると、そうでもないっていう……。
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別に、頑なな支持者の存在自体を否定するものでは ありません。
それはそれで、必要でしょう。
良い面をアピールする人、悪い面をアピールする人が居て、その両者の意見を聞いて動く人が居る。
おそらく、そういうのがベターな状況。
ただ、頑なな支持者が一定数を超えると、硬直化に繋がるという話。
揺るぎない票には、吸引力があります。
浮遊する票をキャッチし、吸い寄せてしまう力。
それが多数決の欠陥とも言えるのではないか。
形式的多数決は、実質的頑固至上主義。
そう思ったところで、とある用語を紹介。
【モスコビッチの方略】
少数派が一貫して強い主張を持ち続けることで、多数派に「自分たちの主張が間違っているのかも」と思わせること。
【ホランダーの方略】
少数派の中にいる有力者の発言によって、多数派の意見を切り崩していく方法。「あの人が言うのなら間違いない」みたいな話。
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てか、主義主張や政策じゃなくて、「どの党を支持するのか」を訊くのは、変じゃない?
どこで支持されているのかも不明な支持。
それって、支持なの?
何を評価してるの?
党に票を入れる項目って、何なの?
どういう意思表明?
好きなアイドル・グループへの人気投票みたいなもの?
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米国マネーサプライ(M1、M2)前年比伸び率
国が価値を保証し、発行する法定通貨。
企業価値によって決まり、企業が発行する証券。
技術が価値を担保し、数が決まってる暗号資産。
昨今の事情で、マネーサプライが増す中、市場が価値を見出すのは何か。
それこそが、現代における最大の投票かも。
法定通貨が市場における優位性を失えば、覇権国家なんて言葉も死語になるのでしょう。
価値があるものは、人が価値があると思っているもの。
信じられたフィクションらしいですからね、とある本によれば。
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【メトカーフの法則】
ネットワーク通信の価値は、接続されているシステムのユーザー数の二乗(n2)に比例する。
そのうち、ITメジャーが全業種を包括し、君臨するようになるかもですよ。