メモ書き

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ドラマ「沈まぬ太陽」の感想

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白い巨塔を書いた山崎豊子さんの小説が原作のドラマです。

日本航空123便墜落事故日航機墜落事故)」みたいな出来事から始まり、長い過去回想が始まる構成になっているドラマです。

以下、ネタバレを含む感想です。

* * *

一発で、JALが企業モデルとわかる感じですが、前半は労使交渉がメイン。
個人的には「国鉄のスト」が脳裏を……。
しかし、某所には『日本航空労働組合(当時)の小倉寛太郎は、「沈まぬ太陽」の主人公・恩地元のモデルになった人物の一人』とありました。

この恩地という名前。ちょっと嫌だったんですよ。
ドラマなんで「音」で聞くわけですが、「音痴くん」みたいな感じに聞こえるんでね……。

同期にして違う道を行くライバル行天四郎も、「仰天しろう」みたいなで「ダジャレかよ」とか思っていたら、本編で「行天が仰天」というセリフ。
やめてよ……。真面目に見れないじゃないか。

それは置いておくとして、主人公が労働組合の委員長に担ぎ上げられ、渋々その任に当たる様子を見ながら、冒頭のシーンにいつ繋がるのか……。
そう思って視聴し始め、途中で気づきました。

「このドラマ、長いんじゃない?」

そう、長いんですよ。
最近 見ていたWOWOWのドラマなら6話くらいですし、1クールなら13話。
でも、これは20話あります。
確認せずに見たので、仰天しました。

労働組合でストを実施した件で会社に睨まれ、海外の僻地に飛ばされた主人公を延々と見続けることになります。
でもって、「あぁ、これはアフリカに行くまで帰れないんだな」と思ったものです。

なんせ、冒頭のシーンではケニアの大使と親しいし、オープニングはアフリカの大地に沈む夕日。
この夕日が「沈まぬ太陽」なら、そこに赴任しないとおかしいわけで……。

なもんで、カラチの後にテヘランへ行ったとき、「まだ、帰れないのね」と思いましたし、次に「ナイロビ」が来て「おっ、ゴールだ」とも。

主人公・恩地元のモデルになった人物も、同じ場所に赴任している模様。
ただ、ドラマのように「遺族のお世話係(後述)」はしていないとか。

なお、冒頭のシーンに戻るのは8話です。ここまでが第1部。

個人的には、主人公だから仕方ないとはいえ、組合側を善く書きすぎじゃないかとも……。
まぁ、時代的なものもありますし、この違和感みたいなものは、若い人ほど強いかもしれません。

「ストは、お客さんを犠牲にする」という視点は、スト決行時の「親の死に目にも~」というセリフにも見られますが、もう少し踏み込んでもよかったかなと。

* * *

それはそれとしても、お金がかかってるドラマです。
ドラマ内に出てくる家電などは、博物館から引っ張ってきたのかと思うほど、レトロなものでした。
テレックスとか、初めて動いてるのを見ましたよ。

それに、海外赴任となれば、現地での映像も要るわけです。日本人以外の役者も。
凄いですよね……。製作費が。

でも、私が見たいシーンは無かった。
テヘランからナイロビに飛ばされる際、踊り子のいる店に連れていかれ、「こういう店のことも覚えておけ」と言われ、「アフリカにも、こういう店が?」というやりとりがありました。
これ、伏線だと思うじゃないですか。
そうか、アフリカのこういう店が見られるのか、興味深いな。
どんな展開で、こういう店が出てくるのかと期待したもんです。
なのに、そんなシーンは無いわけです。
じゃ、踊り子のいる店のシーンなんか、出す必要もなかっただろうに……。

* * *

第2部は、例の事故。
そこからの再建として、他の企業のトップが送り込まれてくる話です。

実在の人物をモデルにしているだけあって、ドラマとしてはスッキリしない展開が続きます。
次々に問題が明るみに出るけど、何も解決せずに うやむやになっていくという、現実にはよくあるパターンの連続……。
そういう意味で、一番の改革者は自殺した彼かもしれません。
死者ほど生者を動かす存在が無いとは、皮肉なものです。

途中、主人公を事故の遺族の世話する係にしたのは、そうしないと犠牲者側の事情を描きにくいので仕方ないのですが、それがドラマの本筋に絡まないので、物語的には遠回りした印象しか持ちませんでした。
いっそ、ベタですが「訴えを起こす」→「主人公が遺族側に立ち、会社と対立」という流れでも、フィクションとしては よかった気も。

まぁ、原作者は かなり取材をしてから書く人らしいので、いい加減のことは書けないでしょう。ノンフィクションに近いフィクションという位置づけなら、先のような安易な展開は避けたいのかも。

それに、取材もなしに政治家を描きたくはないでしょうし、政治家がまともに取材を受けるとは考え難い……。
となれば、ああいう結末しか、ないのかもしれません。

政治家と言えば、金丸氏がモデルなら、竹丸という役名は避けてほしかった。
竹下と勘違いしそうになるので……。
金田とか、そういうネーミングの方がねぇ。

* * *

逆に、最大のフィクションを探すとなれば、行天の存在でしょうか。
彼だけ、モデルがいなかったはず。

主人公が、不正は速攻で何でも暴露するタイプとすれば、彼は逆。
第一に会社への影響を考え、ダメージが少ない選択肢を選びながら、権力を握って変化を促す。

主人公と対比するキャラとして、なかなかの存在感があります。
白い巨塔でも、こんな対比がありましたよね。

でもって、片方が浮気をしていて、愛人がいるというのも同じ。
03年の白い巨塔に続き、今回も浮気されている妻を若村麻由美さんが演じています……。

役者としては、上川隆也さんが「また、元登山部で、理不尽に人に殴られるキャラを」とか思いました。

* * *

見終わってみると、「差別」という言葉が印象に残っていますね。
思想の違いによる差別、所属する組合の違いによる差別、派閥……。

ただ、それがうまく昇華されずに、問題として存在し続けるのは、ノンフィクションよりだからこそ。

そう思いはすれど、後半は「どうにもならんだろうな」という気持ちで、少しダラけた視聴に……。
回収されない伏線を延々と見た気分です。

なもんで、アフリカでハンティングし、亀をペットに飼い、剥製に話しかけていた頃が、一番 楽しそうに見えました。
孤独でどうのとか劇中にはありましたが、どこか生き生きしてる感じが……。

モデルになった人も、サバンナクラブを結成していますしね。

* * *

お勧めするなら、どんな人かと考えましたが、「昔を懐かしみたい人」が一番かも。
あとは原作者のファン。

逆に勧められないのは、「これから飛行機に乗る人」です。
乗りたくなくなると思うので。