昨日に引き続き、中国の話。
とはいえ、今回は主に株式。
色々あったことを振り返っていく個人的なメモです。
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米国に上場する中国最大の企業であるアリババの株価で、週のあたまから20日金曜日までの下げ幅は15%以上に達し、時価総額は4240億ドルにまで落ち込んだ。
<中略>
米国で上場しているオンラインゲーム会社のNetEaseやEV(電気自動車)メーカーのNIO、インターネット企業バイドゥなどの株価は先週、それぞれ11%、10%、10%の急落となった。
この「下げ」以前にも、ちょくちょく「下げ」はありました。
共産党の意向で「上場できず」からのIPO強行とか、塾の非営利化とか……。
7月で最も大きな影響を受けたのが、中国における配車サービスのディディと個別指導サービスのTALエデュケーション、そして英語教育のニューオリエンタルエデュケーションアンドテクノロジー(EDU)である。これらのADR価格は大幅に下落しており、ディディは前月比で約42%下落、TALエデュケーションは前月比で76.2%下落、EDUも64.2%下落と大幅安の状況。
教育絡みでダメージを被ったのは……
・個別指導サービスのTALエデュケーション
・英語教育のニューオリエンタルエデュケーションアンドテクノロジー(EDU)
ともにADRですか。
米国預託証券(ADR)とは、非米国の公開企業の株式を裏づけに発行される米国証券です。ADRは、米国市場において米ドル建てで取引されます。ADRは、米国投資家による非米国企業の証券の購入、保有、売却を容易にするための仕組みです。
www.smfg.co.jp
配車サービスの「ディディ(滴滴、DiDi)」は、中国版Uber。
滴滴出行とソフトバンクが共同出資して立ち上げた「DiDiモビリティジャパン」もあります。
ソフトバンクグループといえば、アリババの筆頭株主。
ソフトバンクグループの株価は、5月から下落基調……。
下がるなら空売りか、あるいはCFDで利益を……。
そういや、某YouTubeアカウントが、しきりにCFDを宣伝するようになりましたね。
まぁ、いいや。
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この「下げ」は何かと言ったら、「独裁政権に投資はできない」というもの。
トップの一声で何もかも変わるなら、一瞬にして企業収益が失われ、投資する意義を失ってしまうリスクを背負うことに。
中国は、何かにつけて数字が大きい。
人が多いと言うことは、各分野の需要も天井が高いわけです。
そこに期待した人は多かった。
とりわけ、教育に費やされる額が大きいので、その方面でシェアを伸ばす企業には、お金が集まりやすかったでしょう。
ところが、共産党が「非営利化で」と言えば、立ちどころに「未来の収入」という期待が失せ、代わりに「何も保証されない市場」というリスクが目立つように……。
今回は「教育」の話だったり、共産党の反感を買っても上場した企業の話だったりしますが、そこに含まれるリスクは同じ。
「共産党の意向」という“右に行くのか、左に行くのか不明”な不確実性。
市場は不確実性を嫌うもの。
今回の下げは、そんなところ。
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一方で、中国側からすれば、違う景色が見えてきます。
「教育に費やされる額が大きい」のではなく、大きすぎるのです。
大きすぎて家計を圧迫している……。
だから、教育に熱を上げないよう、「ゆとり教育」的なものにしていこう。
そのための非営利化、そんな感じ。
そんな感じ?
いや、本音は別にあるでしょう。
ほら、数を増やしたいんですよ、若い人の数を。
だって、一人っ子政策のおかげで、すぐそこに待ってるのは急速な高齢化社会だもの。
介護する人、たくさん欲しいでしょ?
老々介護は嫌でしょ?
若い人、要るじゃない。
なのに、お金をかけて教育をした子どもが介護人材にまわるって、どう?
わが子が望んだとしても、親からしたら「そういうのは、他の子に」とか言いそうじゃないですか。
子どもだって、「せっかく学んだことは活かしたい」と、専門外の介護を選ばなくなる可能性も高くなるでしょう。
上のドキュメンタリー、見たけど感想を書いてなかったかも。
この番組の中で、日本の介護スタッフが出てきます。
中国のやり手の女性経営者と、日本でスカウトした感じのベテラン介護職の人の会話とか、利益と丁寧なケアの葛藤を見る感じで、なかなか考えさせられたような……。
「日本の介護」は輸出産業になりえるのか、という視点で見ることもできますが、向こうのスタッフを見てると、別の問題に目が行ってしまいます。
向こうのスタッフでスポットが当たっていたのは、農村部出身の既婚女性でした。
給与にひかれ、出稼ぎで介護施設へ……。
そう、その施設は富裕層向け。
農村部出身で方言があり、人前で歌うのもためらっていた女性スタッフ。
その彼女が離れた家族と通話しているのを見ると、技能実習制度のことが浮かんでくるのです……。
バブル崩壊後の日本。
中国は、同じ轍は踏まないと研究してきたはずなのに、通るルートが似てきているのは、それが「人口ピラミッドの呪い」だからかもしれません。
いずれ、技能実習制度みたいな名目で奴隷制度を作り、安くて若い人材を入れようとするでしょう。
そして、失われたXXが始まるのです。
安い人材が入るほど、給与を上げる理由がなくなるもの。
給与が下がれば、デフレが起きる。
経済成長は、インフレで加速するもの。
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ここまでが、人口から見た中国の今後みたいな話。
続いては、「社会主義市場経済」から見た中国の話です。
現在の中華人民共和国では、「社会主義市場経済」という経済体制が採用されています。かつての中国は社会主義と計画経済によって動かされていて、土地も企業もすべて中国共産党の管理下にありました。公有制、計画性、党の支配の3点は、欠かせないメルクマール(指標)だったのです。しかし1990年代の初め頃から、政治的には中国共産党による社会主義を維持しながら市場経済を導入するという方針が示され、社会主義市場経済という水と油の同居のようにも見える体制が実現しました。
頭の悪い書き方をすれば、「資本主義」と「社会主義」の悪魔合体。
「資本主義」でうまく行ってるなら、それで。
うまく行かなくなったら、「社会主義」で……。
たぶん、そんなノリ。
って書くと、怒られるかな?
「白猫でも黒猫でもネズミを捕るのが良い猫だ」。イデオロギーにとらわれず、生産の発展に役立つ方法を評価しようとした中国の鄧小平氏の言葉だ。
儲かるなら、それでいい。
それでいい……はずだった。
でも、儲けまくりの人がいる中で、そうじゃない人が山のようにいる。
「平等」を是とした「社会主義」としては、それってどうなの?
これは、いずれ突きつけられる命題。
そもそも、役職なんて要る時点で、国家における「平等」は、幻想にすぎない。
究極的な平等であれば、「身分」や「権限」に差をつける「役職」は設けられないはず。
まぁ、「平等」にも色々とあるんですけどね。
言うなれば、権利の平等はあっても、成果の平等はあってはいけない。
均一分配では、働き者も、怠け者も、同一賃金になってしまうもの。
働かなくても他と同じ分け前なら、楽して稼ぐ方を選ぶ。それは、成果の減少につながる……。
そういう意味では、平等は自由の喪失かもしれない。
見返りを追及する自由の喪失……。
仮にそうであったとしても、鄧小平より毛沢東を崇める人ならば、原点回帰を目指して実行に移すでしょう。
理想的な平らな世界を目指して……。
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そのうち読む。
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今、振り返ると……
微妙な社説かも。
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完全解説「2034」“米中核戦争”の結末は?【豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス】
独裁の弱点は、独裁者の判断力が低下したら、何も回らないこと。
※ 「チャイナリスクの正体」って題は雰囲気です。飾り。