メモ書き

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中国のネトウヨ

「真実への鉄拳 ~中国・伝統武術と闘う男~」というドキュメンタリーの感想です。

www.nhk.jp


ネトウヨ」の定義は知りませんが、取り合えず「排外主義を掲げ、愛国心を刺激し、ネットで人気を得る人」とします。

番組の中心にいるのは、徐暁冬という総合格闘家
彼は、「中国の伝統武術は実践的じゃない、戦ったから勝てる」と言い切り、伝統武術家を簡単に打ちのめしていきます。
その伝統武術家の一人に田野という人がいるのですが、彼をさして「中国のネトウヨ」と書きました。

田野を語る前に、徐暁冬の話。

リンク先に行けば本人を拝めますが、引き締まった体型はしていません。
総合格闘技の番組に出ている他の格闘家と戦えば、負けるんじゃないかって感じはあります……。

ただ、精神的なタフさは、半端ないでしょうね。
番組内では、中国政府からの圧力が凄い……。

反日プロパガンダ映画を作り、戦時下の武術試合で日本人を倒した伝統武術家を持ち上げ、国として伝統武術をヨイショしている背景が、まずあるわけです。

そこに、伝統武術はインチキみたいな煽りを入れ、実際に打ちのめす動画をアップ。
そりゃ、まぁ、政府としては面白くないでしょうね。
「海外」から入ってきた総合格闘技に、「自国」の伝統武術が負けるって解釈になるので。

最終的には、総合格闘家と伝統武術家の試合自体が禁止されます。

そこに至る過程として、仕組まれた警察沙汰、伝統武術家への法的な謝罪要求を課せられる徐暁冬、アカウント停止に動画の削除、顔をペイントして偽名で海外試合する徐暁冬……。
なんというか、中国の一面を延々と見せられます。

これが番組の本筋。
日本でも、合気道の達人が格闘家にボコられる動画がありますが、あれに政府が介入した感じといえばいいでしょうか。動画の削除、倒した側への制裁みたいな感じで。

* * *

さて、本題の田野。

この人、お腹が出ているんですよね。
見た目は、ただのオッサンです。

電気工事か何かが本職ですが、向こうのSNSで人気。
アップしている動画、森で木を蹴っているもの。

「トランプ、東シナ海に口を出すな」とか言って、一蹴り。
「インド人め、これ以上 入ってきたら、こうだ」みたいなことを言って、一蹴り……以下略。

年の割に、足が上がる上がる……。
人の首筋に食らわせられそうな蹴りで、その動きだけは映えます。

とはいえ、徐暁冬には完敗。

でも、彼のファンは支持し続けます。
ファンたちが彼を囲んで、豪勢な食事をふるまい、ひたすら持ち上げる……。

そんな彼も、粗末な自宅に戻れば、女房に「早く現実に戻ってほしい」みたいなことを言われる始末。
ネットでの人気は、非現実。ゲームみたいなもの。
本職をしっかりしてほしいという妻に、彼は「女には、わからないんだ」と……。

そんな彼が、なぜだか今も忘れられない。
キャラとして、強すぎる。

あの痛々しさが、何かを彷彿とさせるんだけど、その何かが出てこない。
「まるで、XXのようだ」のXXを断言したくて、振り返って書くものの、やっぱり出ずにむず痒い……。
そんな心境のメモです。

あと、機会があったら見てほしい。
そう思っています。


* * *

子供に武術を教える人も出てきて、「うちの子の誰かが、軍人になるのを望んでいます」と言っていたけど、武術が上達したところで銃で撃たれれば死ぬわけだし、他の兵器の前では身体能力なんて……。
そう思うと、あの家族が虚しく感じられます。

そういう取り残され感みたいなものが、妙に引っかかるんですよね。あの番組。