メモ書き

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【感想】マイケル・サンデルの白熱教室 「民主主義って時代遅れなの?」

マイケル・サンデルの白熱教室 「民主主義って時代遅れなの?」という番組の感想です。

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「民主主義」についての話し合いなので、「民主主義指数」とか取り上げるのかと思って見ましたが、そういう次元の話し合いじゃなかったです。

言うなれば「青年の主張」みたいな?

まぁ、民主主義指数の妥当性とか、学生が話してもアレだしね。

EIUの2020年版民主主義指数、台湾は東アジアトップに

www.j-cast.com

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司会進行は、マイケル・サンデル氏。
議論するのは、ハーバード大学東京大学慶応義塾大学、復旦大学の学生。

ツイッターで他の人の感想を見たら、日本の大学生だけ日本語で、中国の大学生は英語で凄いみたいなのが多かったですね。
話す内容じゃなくて、使っている言語ですか……。

日本の番組だから、日本語を話せる人は、日本語でって感じだったのかもよ?
いちいち訳してボイスオーバーするの大変だし、金かかるし。
知らないけど。
サンデル教授は、冒頭の「ハクネツキョウシツ」の発音だけ、日本語でした。

話す内容に関して、日本の子が稚拙という意見も見ました。
これに関しては、母国語だから「話し方が幼い」というのがわかるだけで、英語のそれに気づけていない可能性もあると思うんだけど……。
トランプの英語が小学生レベルみたいに言われても、ネイティブほど感じ取れないように。

ej.alc.co.jp


むしろ、ディベート番組として見た場合、中国の前列中央の男性がワーストの印象。
まず、足を広げて座って、ふんぞり返っている……。
この姿勢で、人の話を聞くってどうよ。

次に、議論ができていない。
教授が それまでの話を総括して、民主主義の要素として、検閲が無い、複数の政党……とあげていったのに対し、彼の言う民主主義は「そんなの要らない」というもの。
彼の主張を端的に言えば「役に立てば正義」になるでしょう。
法律を作る過程はどうでもよくて、その法が役に立っているかがすべて。役に立っているなら「民主主義」という理屈。

そして、ドヤ顔。
これ、日本で言うなら「はい、論破」と言って、論破できていないのに、ドヤるタイプでしょうね。

う~ん……。
まぁ、番組最初に教授が言った言葉がすべてでしたね。

「ロシアのウクライナ侵略について、今日 直接取り上げることはしません。(中略)参加している誰かが、ここでの発言によって、あとで困ったり、不利益を被ってはいけません」


国の方針と違うことを言ったら、学生と言えど何をされるかわからない。
そんな配慮が要る国と、ディスカッション。

だからこそ、あらゆる意見で全会一致。
中国の学生は、誰もが同じ意見。手を上げるときは6人で、上げないときも6人で。

その動きはもう、全人代でお茶を注ぐ女性のよう。

 

youtu.be

彼らは、自国が民主主義だと言い、一党独裁と言われているけど、他の政党もあると主張。
で、そこで議論があるかと問われれば、協議と協力があると答える。
「他の政党もあるよ」という体裁を整えているだけで、刃向かうことは許されていない。「他もある」という口実のために存在する政党……かもね。

共産党という大きな党がひとつだけだから、すべての人の望みを叶えられる……。
そんな感じの主張もあり、誰かの利益は誰かの不利益に繋がるから、そんなことはないという反論もありました。
でもね、違うんですよ。

何が違うって、中国にとっての民主主義は、意見の統一だもの。
統一することで、万人の利益を同一にしようとしている。

「すべての人の望み」を「同一」に「矯正」することが、彼らの言う民主主義なんですよ?
嫌な言い方をすれば、洗脳パラダイス。

ほら、ウイグルでやってるでしょ。
その辺をスルーして、我が国の評価を上げるような発言をせよ。
言ってやりましたよ、主席。マンセー……。
こんな心境かもね。

hrn.or.jp

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逆に、中国の学生から出た意見で“よかった”のは、デモに参加できない入院患者の視点。
ワクチン義務化への抗議デモに関して、彼らの動機は賛同できないけど、意見の自由があるという主張に対するもの……。
マイノリティーの意見も尊重するという言葉に対し、意見を上げられないマイノリティーの存在を指摘。

ハーバードの学生の意見を聞いていると、自由に責任は伴わないのが欧米流なんじゃないかと思えてきますね。

あと、都合の良い独裁者待望論は、ここでもありました。
完璧な人が、議論なく完璧な政治を行うのが最良というもの。

確かに、そこにはスピードもあり、結果もあるでしょうが、そんなものは幻想です。
それも悪い類の。

それが実現したら、堕落した国民が完成するでしょう。
パーフェクト権力者が、すべて完璧にやるから、俺らは何もしなくていい……と。

それにね、一人の人間が権力を掌握する恐ろしさを彼らは考えていない。
その辺が若さか、単なる愚かしさか。

今、ひとりの権力者の暴走を目にしているというのに、権力の集中を是認する心持ちの弱さ。
人間なんて、割と簡単に「あの人は、人が変わった」ってなるよ?
その瞬間が訪れたとき、制止する仕組みが無いと、どうしようもないから、民主主義やってるんじゃないの?

それに、独裁が世襲制に繋がったら、最高に厄介なのは……以下略。

朝鮮“民主主義”人民共和国。
その国名も、番組で出ましたね。名乗りさえすれば、民主主義。
だから指数とかの話を……。

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冒頭で、民主主義74:非民主主義93の数字を出し、アメリカのイラク侵攻を話題にしたところが、個人的には期待値のマックスだったかなと。
最後まで見ちゃったけど、それほど得るものもなく……といったところ。

最大の収穫は、イラク侵攻の目的を「政権交代」と言った際に、バイデンの失言の重さを理解できたこと。
あれって、アメリカのトラウマなんだなと。

 

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「権力の座にとどまってはならない」=「政権交代」を示唆。
それを目的に「侵攻」か?

じゃ、てめぇ~もブッシュと同じとなるので。

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全体を通して思ったのは、結局は「自国ナンバーワン」が前提だなと。
自分が育った環境は優れていると“思いたい”ので、相容れない他所に良い点があっても、評価しづらい。
そういった感情が、一部の出演者に見られたかなと。

他の良い点を受け入れ、導入し……。
そういう気概は、あまり感じられない。

物事を客観的に判断し、議論というのは、大人でも難しいというより、大人の方が難しい。
年月というプライドが邪魔するので。
そんな議論を見たところで、そもそも得るものは少ないのかもね。

プライドと言えば、この番組を見る前に、台湾の人に「中国について、どう思うか?」を訊いてまわった番組を見ていたので、中国の学生を見る目が少し変わっていたかも。

 

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番組で紹介されていた歌。
ガラスの心。

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自分たちを少しでも否定されたら憤慨する……。
そんな繊細なハートを持つ中国人、という捉え方が台湾である模様。

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あっ、日本の学生の感想が少ない。
えっと、こういうのに出るのって、意識高い系リベラルってイメージがありますね。
でも、今回のは考えがまとまらないうちに喋りだす人が印象に残っています。

それと、自分の周りだけ見て「日本人は~」と主語がデカいタイプ。

関係ないけど、彼らに「自国以外で住むなら、どこ?」と訊いたら、どう答えるか興味ありますね。
こういう質問でも、はい論破と言いそうな彼は「自国以外、あり得ない」と答えるでしょう。質問の内容を気にせずに、言いたいことを言うと思うので。

 

 

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