「理想は〇〇で……」
結婚相手や恋人に求める条件の集大成、理想の人。
あまりの理想の高さに、外野からのツッコミが入るのが、この手の話ではお約束。
「XXなのに、相手に〇〇を求めるとか、あり得ないよね」
「自分が〇〇を求められたら、炎上案件のくせに」
そういう声を集約し、問いかけにすれば、「あなたは、誰かの理想なのか?」となるかも。
誰かに理想として抱かれる要素もないのに、相手には理想を求める。
自分に甘く、相手に厳しい。
そんな人と付き合うメリットは、どこにあるのか?
まぁ、夢を見るだけなら自由と言えなくもないけど、それは寝ているときだけにすべきでしょう。
起きたまま寝言を言うのは、みっともないし……。
* * *
ここからは個人的な話。
学生時代、幾つか漫画を読んでいましたが、少年漫画の後に読み始めたのは、少女漫画でした。
何でも読んでいたんですよ、本当に。
何なら、親が持って帰るレディースコミックも読んでいました。
少女漫画を読むキッカケになったのは、日曜の朝にやっていた少女漫画原作のアニメを見て、「面白いな」と思ったから。
で、友人の家に行ったら、その原作本があり、読むようになったと……。
確か、友人の妹が買ったものだったはず。
そんな流れで読み始め、思ったわけです。
少年漫画では“少年が理想とする異性”が描かれ、少女漫画では“少女が理想とする異性”が描かれていると。
娯楽とは、そういう理想があるから、現実では得難い旨味があるのかも。
そういう感想を踏まえたうえで、なぜか妙なことを思っちゃったんですよ。
「自分は、誰かの理想になれるだろうか?」
若気の至りと言いますか、漫画に出てくる“王子様”を目指そうとしたという……。
人によって好みのキャラが違うように、クール系男子、弟キャラ、オラオラ、紳士系、優等生と、様々な王子様が存在します。
この中で、自分が目指せそうなのは、紳士系と優等生くらい。
ということで、勉強してクラスでトップの成績、あとは性格が良さそうな感じを目指しました。
成績はあと一歩及ばず。性格は、にこやかにするのが精いっぱい。
根が暗いので、少し明るめに振る舞うのが限界でした。
その結果、どうなったか。
まず、クラスで一番嫌いな女子に好かれ、それでも笑顔でいることで更に疲れ……。
最高のタイミングで、病気になって入院。
散々な状態になり、理想を演じるのは辞めたわけです。
* * *
よく「モテたい」という言葉を聞きますが、嫌いな人から好かれるのは苦痛です。
好いてほしい人に好かれる。それ以外は、どうでもいい。
そのくらいの気持ちでいた方が、楽に生きれるかもしれません。
嫌いだからといって、わざわざ敵にすることもないですが、味方になると超絶厄介です。
迷惑な味方は、攻撃できない敵。無敵の敵。
消えないデバフのようなもの……。
「誰かの理想」になると、理想を求めて群がる人は、次々に「理想」を求めてきます。
「あれもして、これもして」
「夢を叶えて、ドラえもん」
こうして、要求は過大になっていき、その理想を求めてくる人を嫌いになる。
「クラスで一番嫌いな女子」とハッキリ言えるのは、そういう人だったから。
そして、実際に多くの人に嫌われていました。彼女は。
* * *
「あの人は、私を理解してくれない」
「あなたは、その人を理解しようとしたの?」
某アニメで似たようなやりとりがありましたが、コレなんですよね。
相手に求めるばかりで、自分は何もしない。
相手も同じ人間で、意思があると理解せず、自分の要求ばかり突きつける。
夢をかなえるマシーンじゃないのに……。
果たして、これは理想と呼べるのか?
理想だとして、それを叶えてやる義理は、誰にもないのではないか?
少しでも理想に届けば、次々に理想を求める。
欲求に果てがないように……。
その姿勢の先に、いつしか理想も消え失せる。
消え失せたころに、また言うのです。
「あの人は、私を理解してくれない」
だから、そういう人とは適切な距離を保ち、厄介さんにとって、自分はモブキャラでしかないような立ち位置を目指す。
そういうライフスタイルを心がけるようになったかな……。
* * *
他者への「理想」を語る人を見るとき、先のことを思い出します。
「あなたは、誰かの理想なのか?」
その問いに今答えるなら、「誰の理想になる必要もない」ですかね。
でもって、「人にも求めるな」です。
他の誰かは、あなたの為に生きてるんじゃないんだから。