メモ書き

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「食品偽装大陸ヨーロッパ」の感想

フランスのドキュメンタリー番組の感想です。

原題は「FOOD FRAUD」なので、「食品偽装」でしょうか。
邦題に「大陸ヨーロッパ」が付け加えられているのは、その規模がEU圏内だからでしょう。

www.nhk.jp

率直な感想は「ヨーロッパ版ミートホープだな」ですかね。
国を跨ぐ巨大ネットワーク上で展開する分、ミートホープよりタチが悪いですけども

メニューとしては……

・馬肉たっぷり牛肉
・骨と捨てる部位の牛肉ステーキ
・ほぼ菜種油のエクストラバージンオリーブオイル
・硝酸塩で赤くした賞味期限切れマグロ

と言った具合。

食品の調査は、遺伝子解析で「何の肉か」をチェックするパターンと、潜入取材するパターンがあったかな。

市販の肉を使った商品を買ってきて調べたら、牛じゃなくて馬の肉が多分に含まれていたという……。

ヨーロッパでは、馬肉が混入した牛肉製品とされる食品が流通していたことで、2013年初頭から、「馬肉スキャンダル」と呼ばれる大騒ぎが続いている。

https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/project/attach/pdf/130731_25sup2_09.pdf

馬肉のルートは、下記のような感じ。

カナダやルーマニアの肉
キプロス
⇒ベルギーやフランスで偽装
ルクセンブルクへ出荷

仕切っているのは、食品偽装マフィアみたいな紹介をされていたヤン・ファセン。
彼に限らず、常習犯なんですよね。食品偽装する人は。
罰則が重くないのが理由だとか……。

稼げるのは、単純に原価が安く、粗利が上がるから。

* * *

続いて、ポーランド製造の偽装ステーキ。
こちらは、本来なら捨てる部位や骨で構成されたもので、不足分のたんぱく質は植物性たんぱくで補っているという……。

目を引いたのは、潜入取材時の映像ですね。
ヤバい感じの病気で死んだ牛がトラックで運ばれてきて、そこから解体されていくという……。

チェックすべき獣医はスルーし、その国の担当大臣も見て見ぬふり。
偽装を見破ることに、メリットが少ない人が多いんでしょうか……。

* * *

エクストラバージンオリーブオイルは、オリーブの実をしぼっただけのオイルです。
見た目は緑色。

なので、黄色に近い菜種油とは色からして違います。

でも、クロロフィルを垂らすと緑になるし、ベータカロチンで香りづけすれば、オリーブオイルのそれ。

オリーブの産地イタリアじゃ、温暖化でオリーブの収穫量が減ってるって言うのに、なぜか輸出量は変わらず。
そのからくりは、海外から輸入した菜種油+αをオリーブオイルとして売っていたから、みたいな話。

原価が全然違うので、相当な粗利になる模様。

* * *

最後に、魚。
偽装しやすい食品ジャンルだそうです。

量を重さで測るので、塩水を注入してかさ増しするのは、よくある話。
でもって違法じゃないらしい。
ポリリン酸ナトリウムとか、食品添加物として普通にあるしね。

この手口は、ベトナムや中国で多いそうです。

映像的に印象に残っているのは、茶色くなっても、硝酸塩で赤くなるマグロ。
赤い方が新鮮に見えるからね……。

食えないレベルのマグロでも、硝酸塩の注射で復活するのは、ちょっと気持ち悪かったですね。

スーパーの食肉コーナーで、赤いライトで照らす話を思い出しました。

* * *

調査する側はフードウォッチという団体が主ですが、なかなか動きづらい状況のようでした。
EUという枠の中で問題が起こったとして、どこが取り締まるのか……。
この一点だけ見ても、金にならなそうな問題は他所に押し付けたくなりますよね。
なので、製造国って結論がシンプルですが、あっちこっちを移動すると、後手に回りそうだもの。
マネーロンダリングならぬ、フードロンダリングしてそうな勢い。

じゃ、小売店で売らないように、チェックを義務付けて……。
ここまでくると、今度は販売店をやるメリットが少なくなりそう。
チェック費用がかさんで、儲けがなくなるって話。

色々と厳しいよね。

そんな感想を抱きつつ、輸入菓子の下品な味つけは、そういう背景もあるだろうなと思った次第。
あとはまぁ、そんな状況でトレーサビリティだの、ケージフリーだの、よく言えたもんだなと思ったり、思わなかったり。