メモ書き

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ライバルは過去にいる

創作系ジャンルにおいて、「〇〇もの」「◇◇系」みたいな分類がよくされます。

「××系」の作品が増えれば、「時代は××」「××ばっかでつまらない」「××の何が面白いの」「××の良さがわからない奴はクソだ」みたいなやりとりが起こります。

同時に「もう△△の時代は終わった」「△△が流行っていた頃は良かった」「最近の△△は面白くない」といった意見も見受けられます。

今現在、新しく作られている創作物に関して、流行り廃りがあるのは当然のことですが、かつて人気を博したジャンルが衰退する原因は、流行だけではないような気がします。

もちろん、流行によって市場に溢れたから飽きられることもあるでしょうし、二匹目のドジョウを狙った質の悪いものを見て、嫌気がさすケースも考えられます。
一方で、時代が違えば、社会背景も違い、求められる要素が変わることもあるでしょう。


映像作品に関しては、ビデオが普及する以前は“そこ”まででした。
しかし、ビデオが普及し、DVDへと変わり、ネット配信で気軽に観られるようになった今、“そこ”まででは済まないのではないでしょうか。

以前なら、「〇〇もの」を観たいという欲求を満たしたかったら、リアルタイムで放送しているものを観るしかありませんでした。
ビデオが普及してからは、録画したものやレンタル、パッケージ販売されている物を購入するという選択肢が増えました。
でも、それは外に出て借りる、または購入する必要があったのです。
今は、家から出ずに視聴できるタイトルを増やせます。
しかも、放送とは違って、観忘れたり、録画し忘れたりすることがない。いつでも最初から観られる。このアドバンテージは大きいです。

「〇〇もの」を観たいという欲求を満たしたい場合、放送されているものを観る以外に、過去に放送されていた作品を観ることも選択肢に入ったのです。
以前はリアルタイムで放送されているものがライバルだったのに、今では放送を終えたタイトルもライバルになっている。そう、ライバルは過去にもいるわけです。

「□□向け」の作品が増えたとします。
その傾向分析を「□□は金を持ってるから、作品も売れる。だから、たくさん作られる」と言ってしまうのは簡単ですが、過去タイトルに「□□向け」がどれだけあったのかも重要ではないか。そういうことを言いたいのです。

過去に「**向け」が山のように作られていたら、その市場は既にレッドオーシャン
多くの名作たちと争い、比べられることを余儀なくされます。
需要よりも供給が上回っている可能性が大。

自称慎重派の人たちは前例主義が大好きですが、前例があるもので勝負するというのは、「新しさ」というウリを最初から捨てることになります。
「またか……」「どこかで見た話だから、同じのを見る必要はない」という感想と向き合うことを考えなくてはいけません。
「この作品は、同ジャンルの他作品と、どの辺が違うのか」という見方をする人もいるでしょうし、「このジャンルだから見る」という人もいるでしょう。
……いるでしょうが、それは少ないパイを争うようなもの。そんな気がしてならないのです。

「Aという作品は、そこそこ面白いけど、同ジャンルの中では凡作」
「Bという作品は、まぁまぁ面白いけど、似たような作品はない」

満足度が同程度なら、希少価値が高い方に分がある……かもしれません。

同ジャンルであれば、「あの作品みたいな感じのバトル演出で、でも爆発パターンはこっちの作品のように」みたいな指示が出せて、作りやすいという点もありますが、せっかく作るなら「見たことがないもの」だと有難い。
他の何かで代用できるものではなく、新しい体験がしたいのです。

ヒットの根拠が欲しいというなら、前例に走るのではなく、市場調査に力を入れるべき。

「そんな資金は……」と思うかもしれませんが、地図も持たずに船出するより、高くても正確な地図を買った方がいいと思うのです。
目指すべき場所もわからないようでは、それこそ資金がもったいない。ケチるべきところと、そうでないところがあるはず。

「そんなことは、わかっている」と関係者に言われそうですが、こんなことを書きたくなるような作品が目につくと言いますか、たまたま多く私の目に入ったので書いた次第です。