「経済制裁なんて、意味が無い。北朝鮮が、まだ存在しているから」
たまに目にするのが、上記のような内容。
「経済制裁」の目的が「存在消滅」なら、「そうですね」になるけど、何らかのペナルティを武力以外で示すとなると、「経済制裁」くらいしかないんじゃないの?
そう思わないでもない。
でもって気になるのは、「北朝鮮がこうだから、ロシアは」という論理展開。
北朝鮮とロシアじゃ条件が違いすぎて、同じ対処をしても効果に差が出る気がすると思ったので、その辺を考えるために“違い”に目を向けようかなと思った次第。
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強権政治の国々を並べて見た場合、北朝鮮の特色は世襲制にある……。
トップに君臨するために、選挙を必要としない。
これは、新たな候補者という脅威が出づらいうえに、権力継承の正当性みたいなものがあり続ける。
「次のトップは誰がいいか」という思考の放棄。
この思考停止状態が国としての停滞を生む……。
「次のトップは誰がいいか」には、「誰なら、良い方向に導くか」という問いも含まれるし、「あるべき国の姿」にも言及できる。
それを考えなくなり、候補者同士の競争がなくなれば、誰も「善き方向へ向かう政策論議」など、しなくなる。
逆にメリットを考えるとするなら、候補者同士が武力衝突しないし、選挙費用がかからないことくらい。
最大のデメリットは、権力者の気分次第で万事が決まること。機嫌を損ねたら殺されるし、自由も簡単に奪われる。
この世襲制だけ見ても、北朝鮮国内において神格化された一家は特別過ぎて、その辺の権力者とは基盤の安定度が違う気もする。
じゃ、他の権力者が世襲制を始めたら……。
その可能性を考えた場合、権力者の神格化作業が必要になる。
習主席「赤い遺伝子」の継承は、それに近いような……。
ただ、彼の子供は娘一人。
プーチンも娘。
この辺が、ある意味“救い”であり、今後の世界の“運命”かもしれない。
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他の要素として、真っ先に考えるべきは国民の状態。
北朝鮮では、満足に情報を得られる手段が無い。
北朝鮮のネット使用率 世界唯一「0%」=国際機関報告書
完全なる情報統制下におかれているので、反政府的な活動に発展しづらい。
そもそも、ろくに電力も……。
生きるのがやっとな国民では、反乱を起こすのも難しい。
せいぜい、自分の利益のために強盗を繰り返すのが関の山。
まぁ、それが暴動に繋がれば別だけど。
そんな北朝鮮が持ちこたえているのは、ハッキリ言って自国の力じゃない。
ある意味、他国に依存している。
その依存している国が潰れるか、関係を変えると劇的に変わる可能性があるかも……。
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この北朝鮮に比べれば、多くの国民がスマホを持つ中国やロシアは大きく異なる。
VPN接続で外の情報を手に入れらるし、発信もできる。
規制されても、一定数を超えれば拡散力が上回る……。
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でもって、民族が単一じゃない。
ロシア人80.9%のほか、180を超える少数民族から成る。タタール人3.9%、ウクライナ人1.4%、バシキール人1.2%、チュバシ人1.1%など(2010年調査)。
共産圏の統計データはアテにならないけど、色々いるのは想像できる。
中国に至っては、一人っ子政策時の隠し子というか、戸籍なしの人もいるでしょうから、もっと多いはず……。
民族以前に、都市と農村で戸籍が違うし、雇用データに農村が入ってなかったりして、分析する側からすれば厄介。
ということを書きたかったんじゃない。
多民族国家は、強い締め付けが揺らいだ時、民族単位で分裂しやすいという話。
固まって住んでいる場合はね。
ロシアの場合は、地理的な条件で分裂するかもしれないけど。
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国防という観点で見た場合、その国土の広さがネックになることもある……。
「一人の兵士が守れる面積」なる概念があるとすれば、広いほど多くの人がいるわけです。
「この5階建ての建築物だと、警備員は3人は要りますね」みたいなもの。
もちろん、地形を考慮して要所を抑える発想をすれば、面積で計算できるものじゃないとなるけど、広くなるほど費用が増えるのは想像に難くない。
その点で見ると、北は仲間の中国で、西と東は海、南だけ警戒すればいい北朝鮮は割と楽。
そこまで面積も広くないし、南のトップがアレだったし……。
それ比べ、ロシアや中国は他国と接している面積が大きい。
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こうしてチェックしていくと、改めて気づかされるのは中東やアフリカの国々の外交センスの無さ。
もしかしたら勘違いかもしれないけど、そう感じてしまう……。
“ロシアのせい”で、穀物の輸入先であるウクライナがダメになってるのに、ロシアを批判しない。
そのロシアや北朝鮮に武器を依存し、西側と距離ができている……。
中には、返す目途も立っていないのに、やたらと中国から金を借りる国も……。
発展途上国が先進国にならない理由は、その辺にあるのかも。
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で、最後に「今後の日本」について。
誰かが想定外の行動を取るだけで、簡単にリスケジュールが組み込まれそうだけど、一応は下記のような印象。
・参議院選挙前にインバウンド需要回復で、観光業の票集め
・選挙後に原発を再稼働し、余ったLNGなどを欧州に融通して恩を売る
・反原発を活性化させないために、再稼働の準備スタート報道を目立たなくしようと、キャッチーな話題作りとしてデカい不正のリーク
・ウクライナへ地雷除去の機械、組み立て式ハウスの提供
・工場労働系産業の国内回帰と氷河期世代の雇用、退職する頃には自動化検討
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【追記】
貧乏慣れしてる人と、そうじゃない人では、制裁の影響も違うだろう。
というのを書き忘れた。
「かつてブータンの幸福度が高かったのは、情報鎖国によって他国の情報が入ってこなかったからでしょう。情報が流入し、他国と比較できるようになったことで、隣の芝生が青く見えるようになり、順位が大きく下がったのです」
この一点だけ見ても、北朝鮮は特殊。
他を知らないから、我慢ができる。
他国が享受している幸せを知らないから、我慢を我慢と思っていない。
あと、そうだ。
彼らにとって強権政治が当たり前なほど、そのトップが失墜した後の混乱は増すでしょう。
独裁者を“悪の親玉”と捉え、奴を倒せばオールOKと思いやすいけど、実際には別の“悪の親玉”を生む機会を作るだけかもしれない。
「アイツの方がマシだったな」と、混沌とした社会を見て、思う人もいるでしょう。
“悪の親玉”とは個人ではなく、それを生む土壌なのだと気づいた頃には、別の“悪の親玉”を見つけて……。