NHKスペシャルの感想です。
見終わって思うのは、信念という病について。
ミャンマー国軍の“同じ国の民を容易に殺せるメンタリティ”の背景――
言葉にすると無味乾燥な感じはしますが、もしも自分の近所に住んでいる人同士が、殺す側の職業と、殺される側の職業に分かれるとしたら……。
そう考えると、国軍側が誰かを殺せば、その報復で国軍側の家族が……。
あるいは、誤って国軍側の家族を誰かが……。
そういう可能性を考えていたのですが、どうも事情は想像以上に悪いようでした。
そもそも、軍関係者は住んでいる場所が違うんだそうです。
でもって、そこで受ける教育は洗脳に近いもの。
「民主化を唱える者は危険人物」みたいな前提のもと、民主化派閥には軍関係者を殺害した過去があると教えられるんだとか。
情報ソースは、国軍から抜けた人の証言でした。
脱走すると厳罰に……と言っていましたが、彼らは今後どうなるのやら。
軍は隔離された場所で、検閲済みの情報にしか接しない。
こういう背景があるから、ためらいもなく同じ国の人間を撃てるんですね……。
う~ん……。
こういう人を相手にデモをしたところで、意味はないでしょうね。
反撃すれば「やっぱり、危険人物だ」という教えを強固にしてしまうでしょう。
* * *
市民側に視点を移すと、「平和的なデモが解決策」と信じて、集まっては散ってを繰り返している。
これはこれで、危うい信念だなと。
相手側の立場に立てば、「デモで自分たちの行動を非難している奴らがいる」というのは、「面倒なのが集まっている。一気に叩く好機だ」となるわけです。
デモで非難されたからといって、それを聞き入れても得はない。
なら、消えてもらう方を選ぶもの。
デモは、解決策ではなく、崩壊を加速する手段。
であれば、相手にとっての不都合を考えるべき……。
国軍は、何をされたら嫌なのか。
おそらくは軍関係者の家族の襲撃でしょうが、これをやったら誰からも支持されないでしょう。
番組内では、北部の集落に行ってゲリラ訓練を受けた元工場勤務の青年が出てきましたが、最終的には攻撃にあって仲間は殺され、生き残ったのは彼を含めて2名。
着の身着のままで逃亡中と……。
その青年に対し、「相手を殺したら、軍と変わらないんじゃないか」と突っ込んでいましたが、最終手段に出るしかないと答えていたような……。
これも、う~ん……。
その先にある未来は、なんでしょうね。
仮に、彼ら国軍を打倒し、政権を奪取したとして、武力での制圧が繰り返されただけ。
洗脳が解けない元国軍兵などはいるでしょうから、内戦が続いていく未来を想像してしまいます。
* * *
番組としては、バゴーで何があったのかを探るとか……。
国軍系企業のハッキングによって得た資料の解析。
それで得た「MEHL」「MEC」の金の流れ……。
関係する海外企業とか、あとは中国からのパイプライン。
日本では、「ヤンゴン市内都市開発(Y Complex事業)」のこと。
といったことにも触れ、資金の流れを止めろというデモが、日本でもあったことが出ていました。
日本でのデモと言えば、番組の冒頭と〆は、五輪会場の外で行っていたデモ……。
そこはデモ会場じゃないのに。
感染拡大を避けたいなら、中核派みたいなことは……。
あとは、いつもの国連の風景。
中国、ロシアの反対で否決みたいな?
* * *
個人的な感想としては、最初に書いた洗脳教育が背景にあるなら、この問題は相当厄介であり、それを「国際社会」に「丸投げ」するのって、どうなんよと。
困ったときは、「見捨てるな、助けるべきだ」と言うも、こちらが困っていることにはスルーでは、なんだかねぇ……。
もしも、国際社会による制裁によって国軍が衰退したとして、そのあとの未来絵図は誰が描くのだろう。
自分がトップに立つんだと部族対立が起こったり、望む新政府の理想が違ったりで、国内でドンパチが続くのであれば、国軍の組織は解体せずに頭だけ付け替えた方が……。
そう思うところも出てくるかもしれない。
何れにせよ、この国のハッピーエンドは見えない。
それが、率直な気持ち。
* * *
【追記】
元軍部の人に聞くべきは、「なぜ、あなたは抜け出せたのか?」「どうして軍部の教育に染まらなかったのか」の2点だった気も。
情報が限られた社会の人を相手にする場合、事実を知らせるのが効果的という発想は、割とよくあるとは思うけど……。
風船を使って新聞を飛ばすみたいな感じで。
ただ、染まり切った相手だと、相手がデマを流してきたで終わるんでしょうね。