メモ書き

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神も陰謀論も、世界を理解する為のツールである

知らないというのは、きっと怖いこと。
暗闇を恐れるように、何も知る術がない状態は、恐怖でしかない……。

だから、人は恐怖を克服するべく、物事を理解しようと努める。

……という前提で考えた場合、太古の人間にとっては、日が昇ることも、月が輝くことも、そこれこそ生老病死のすべてが、理解できない謎の現象だったに違いない。

「これは、何々という病気で、何々が悪くなり、こういう理由で死に至ります」

そんな説明をされることもなく、説明されたところで理解できる知識もないまま、急に具合が悪くなって息絶える人を見続け、「何かの理由」を欲したのかもしれない。

それが天罰だったり、呪いだったり、空想生物だったりしたのではないか。
その空想生物の中で、トップの座に君臨したのが神だった。

人類にとって手の届かぬ別次元の存在「神」を用いることで、その意味不明さを理解し、解釈し、受け入れようとした。
すべては、説明不可能な現象を誰でも理解するために……。

* * *

凶悪な事件が起これば、再発防止を掲げて犯人にスポットが当たる。
でも、本当のところは違う。

求めている知人のコメントは「そんなことをする人だとは……」ではない。
「小さな頃から、変なところがありました」みたいな特殊性が欲しいのだ。

その特殊性に当てはまる存在が身近にいないことを確認し、自分には無関係の事件だと安心したいから、犯人探しや特徴ピックアップに余念がない。
そんな心境の人にとっては「あの人、普通の人でしたよ」は、最悪のコメント。
普通の人が危ないなら、何も安心できないもの……。

* * *

そう、人は安心が欲しい。
安心するために「事件の原因をわかっている」と完了形にしたい。

同じように、神の存在を作り上げた太古の人々は、理解できない科学的事象は万能法則「神」で片づけた。

そのうち、神の所業に法則性を見つけ、「日照りの前には何々が起こるから、きっと こういう理由で神はお怒りなんだ」とか言い出し、お供えとか始めたたのかもしれない。
でもって、一言も喋らないのに権威を手にした「神」を用い、自分の利益を求めた人もいるでしょう。
さらには、神のストーリーを用いて、よりより社会を築こうとした人も……。

「法」という概念がなく、「王」が権力者であるなら、その権力の担保は何か?
「力で勝ち取った」が事実だとしても、その子々孫々まで継承されるなら、そこには「神に選ばれた」という担保がいる。
最大権力者による保証。それこそが、神の選択。

神の名のもとにルールを策定する際、便利な点がある。
ひとつに、刑罰が要らないこと。
ひとつに、執行者が不要なこと。

「善行を積まなければ、死後の世界で云々……」

これさえ信じてもらえば、ルールを破った者を取り締まるコストと労力を削っても、ある程度は自発的に守ってもらえるし、何より「ルール」を理解する能力がない人にも効果がある。

なるほど、こりゃ政治と宗教は相性がいい。

* * *

そんなこんなの相性の良さから、宗教サイドが政に口を出し、大きな力を手にした事例は、世界中にありそうなもの。

でも、元をたどれば「お手軽な恐怖排除機能」だったのかもしれない。
今となっては、その世界を理解した気になるツールは、アップデートの仕様がないほど、致命的な不具合が頻発。
けど、今更やめられない人々が山のようにいる。

だから、「信教の自由」という選択肢を選ぶしかない。
いっそ、禁止にでもしたい人もいるだろうけど、独裁国家でも無い限りは無理だろう。
逆に言えば、独裁のメリットは厄介な古い思想の排除がしやすいことだが、それが可能な時点で「そこには、別の厄介な思想」が存在している。
独裁は、一種の宗教だもの。その思想に、自由がない時点で。

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「お手軽な恐怖排除機能」を持ち、別の刺激も享受できるシステムがある。
それが陰謀論

「世界の真実は、これだ」という内容で興味を引き、信じる者に「秘密の共有」にも似た快感性を与える。
誰でも理解できそうなエピソードにすることで、事実を理解できない人々を“救済”し、「わかった気にさせる」ことが魅力。

「これは、何々という病気で、何々が悪くなり、こういう理由で死に至ります」

という説明を理解できるのはスタンダードになった社会において、理解できない人は居場所がない。
そこへ、シンプルな「世界の真実は、これだ」を持ってこられると、「私でも理解できた」な陰謀論に飛びつく。
理解した気になれば、未知の恐怖を克服できるもの。

そのうち、同じものを信じる者同士で仲良くなり、連帯感が生まれ、過ちに気づいても抜け出せなくなる……。
あるいは、自分を正当化したいがために、都合の良い情報を抱けを集め、その論理への忠誠を高めていく。


……みたいなことを考えたというメモです。
ちょっと痛い内容だけど、こういう変な思考も吐き出さないと、なんか頭の中に詰まっていく感じなんだよね。