株価の上げ下げには、いつも適当な解説がついています。
例えば……
国内の新型コロナウイルス感染拡大への懸念が重荷となり、売り注文が先行した。
昨年から目につくようになった理由がコレ。
一日二日じゃ感染状況なんて大して変わらないのに、下がれば理由にされる感染症……。
このニュースの後、株価が上昇に転じれば、理由は「反発」の一言。
“感染拡大への懸念”は、一日二日で消え去るものなの?
こういうニュースを何の疑問もなく見続け、あるいは流し続け、「何かを知ったつもり」になるのは、どうなんでしょうね……。
ちなみに、メディアの数だけ「下げの理由」は存在します。
これはアメリカで量的金融緩和が縮小される時期が早まるとの観測から、株価が下落した流れを受けたもので、半導体関連など幅広い銘柄に売りが広がりました。
金利や経済政策理由なら、まだ理解しやすいというもの。
しかし、実際には他に大きな理由があるでしょうね。
それが「利益確定売り」です。
A「2,345円で某社の株を100株買ったんだ。今日の終値は2,995円だったから、含み益は65,000円」
B「じゃ、65,000円儲かったの?」
A「いや、まだ売ってないから、利益は確定していない」
売らなきゃ利益は確定しないし、損も確定しない。
含み益か、含み損が増えていくだけ。
※ 配当や優待などの利益を除けば。
この後も上がっていきそうなら持っていた方が得だし、下がっていきそうなら売った方が得。
値動きが少ないなら、持っていても資金の機会損失になるので、売って別に投資したほうがいい。
そういう理由でも、売られる。
A「これ以上は上がらないな。売って利益を確定させるか」
と思う人が多くなれば、それに続いて売っていく人が出始める。
問題は、利益確定ラインや損切りラインが、どこなのか……。
2,345円で買った人は、2,800円まで下がっても、含み益が余裕なので精神状態は安定しているはず。
2,745円で買った人は、2,800円まで下がったら、含み益から含み損になりそうなので、売ろうかと考え出す。
2,945円で買った人は、2,800円まで下がったら、含み損が1万円を超えているので、損切すべきか塩漬けになるリスクを背負うか、はたまた今が底だと祈り始める……。
人によって資金力が違うので、リスク許容度も大きく違うでしょう。
なので、一概に精神状態は断言できませんが、上のような心理面になりそうなのは、想像に難くありません。
この人の心理が表れているのが、チャートです。
幾らで買った人が多いのか。
それをチャートから読み解けば、上値抵抗線やら、下値支持線やらが見えてくる。
下のチャートは任天堂のですが、値動きが少ない時期が長いのを見れば、この辺りの価格帯で買った株主が多そうだ……となるでしょう。
ところで、上のチャートでは2015年の高値から2016年にかけ、株価が下がっていっていますが、そのあとに どうなると思います?
そのまま暴落? それとも反発?
答えは、実際の値動きをチェックすればわかりますが、この先が見えない状態で売り買いを判断していると思えば、投資家の世界に近づけるかも。
それはそれとして、こうやって資金が巡ることで、新たな何かが生まれていくのでしょう。
個人的には、まだ世界に無いものを生み出そうとしている会社に資金が流れ、その新しい何かの普及で生活が良くなり、資金を投じた人にも利益が還元される。
そんなシステムとして、株があればと思っています。
既に成熟した業界もあるので、そういった値動きの少ない市場に資金を投じ、配当を得るのも悪くないですけどね。
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あれこれ書いてきましたが、下がった理由は「売った人」に対し、「なんで、売ったの?」と訊いて、統計的に価値のある数の回答を得ないと、「下がった理由」としての価値が低いのではないか。
それより、もっと違う情報を……以下略。
株価に関するテンプレ文が用意されていて、それを書き足したり、削ったり、変えたりしてるだけかもね。
ほら、毎日のように情報を出すんだもの。
精査する時間も、何かに詳しくなる時間もなく、やっつけで「いつものアレ」を繰り返すだけ。
そんなコピペ文章に広告がついたものを提供されているだけの話。
「忙しい」「仕方ない」「ずっと、やってきた」「面倒くさい」
これが停滞と、価値を低下させる理由。
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「利益確定売り」以外の理由としては、下記が有名かな。
バカンス前に売って、楽しく遊ぶ。
同じ理由で、市場が開かない連休前には売られがち……。
「Sell in May, and go away; don't come back until St Leger day.」
「相場が高い5月に売って、9月半ばに再び市場に戻ってこい!」