メモ書き

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「原点回帰」という失敗フラグ

「初心忘るべからず」

そう言われることはあるけど、創作においては どうなんだろうね?
そんな話。

大抵、「原点回帰」を持ち出すタイミングって、過去にヒット作を出した人が鳴かず飛ばずになり、苦しみぬいた末。
それは まるで「楽しかった あの頃」を思い出すよう……。

「昔は、よかったね」を語ったところで、その思い出に浸れるのは、昔を共有している仲間だけ。
とはいえ、昔を振り返るほど暇じゃない人、言い方を変えれば「前を向いている人」には、その「昔は、よかったね」は必要ない。

「昔は、よかったね」が必要なのは、今を楽しめていない人。
新しい面白さを発見できない人。

そういう人向けの“思い出リメイク”に需要はあるだろうけど、ノスタルジーに浸れる“原点そのもの”には遠く及ばない。
まがい物にすら映るでしょう。

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同じものを食べ続ければ飽きが来るように、過去作の二番煎じには新鮮味がなく、驚きという名の刺激が不足している。

結局のところ、原点回帰は劣化コピーにしかなっていない。
それゆえの失敗フラグ。

もしかしたら、創作者には二番煎じの自覚があるものの、それしか生み出せない状況だから、「原点回帰」と表現しているのかも。
圧倒的に批判が多くても、大人の事情で悪く書けない際に「賛否両論」と書くように……。

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人間、時間が経つほどに、歩いた方向と距離は違ってくるもの……。

学生時代は、家と近所と学校くらいしか、集団を知らなかった。
それが大人になり、会社、新たな親類、飲み仲間、子どもの友人関係、取引先と、嫌でも増えていく……。

どんな関係性が増え、どういう知識と考えを身に着けていくかで、かつて話が合う友人だった人が、理解を得られない難敵に変わることもあるでしょう。

同様に、創作の現場しか知らない人が描く未知の集団は、その集団に属している人からすれば、酷く幼稚な妄想に映ることも……。

例えば、子どもの頃に漫画で見たサラリーマンは、まだ未体験なので「サラリーマンって、こうなんだ」と素直に受け入れられる。
でも、実際にサラリーマンになった後だと、「なんだ、この作者。働いたことがないのか?」となることも……。

これが、子どもの頃は誰もが一緒に楽しめたのに、時間が経つと無理になる理由の1つ。

若い頃からずっと似たようなジャンルの作品を描き続け、新たな情報をインプットしないでいると、過去に得た古い知識やステレオタイプ化した人物像ばかりの退屈な……以下略。

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新しいものをつくる気がない時点で、どこか終わっている。

思い出の中に生き始めたら、それは老いというもの。

インプットし続け、何かに影響を受けなくては、新しい自分も生まれない。


アレコレ書いたけど、「原点回帰」を掲げる作り手に思うのは、そういうことなのかも。
厳しい言い方をすれば。

まぁ、フィクションの感想を真面目に書くことも、「どこか終わっている」気はするんだけど。