メモ書き

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「記憶にございません!」の感想

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支持率の低い総理大臣が記憶を失い、態度が一変するコメディです。

ただ、「政治」に関する描写がステレオタイプ過ぎて、人によってはコメディどころじゃないかもしれません。

展開としても、心を入れ替えました系ハッピーエンド。
それ以上でも、それ以下でもない。そんな印象。

よく言えば、スタンダードにエンターテイメントしています。
手垢がついたストーリーラインですが……。

定番要素としては、親父を尊敬したいけど尊敬できない子供がいて、自分に目を向けさせるために問題を起こす。
でも、最終的には尊敬できるようになる……。

あと、相手と意見が対立してマズいことになったと思いきや、「意思表示できる関係性になった」とプラス評価。

でもって、旦那に構ってもらえずに不倫。
それを許して大団円。

知られざる隠し通路。

金で動くワケ&過去ありの記者。

組織的な問題が、人情で解決する。

……あげていると、虚しくなってきた。

こういった定番が許せる人なら、記憶を失って人格が変わった主人公を見て、楽しめるかも……。

ん~。
でも、視聴者は記憶を失う前の彼をよく知らないまま、喪失後から見せられるわけなので、構成としては微妙ですね。

「私たち、入れ替わっている!」という展開があったとして、入れ替わった後から見せられたら、面白みがないでしょ?
だって、入れ替わる前を知らなければ、「そういう人格」として受け取っちゃうもの。
そういう意味で、微妙。

この作品では、過去の映像を見て前の自分を知っていく流れです。
視聴者は、記憶喪失の主人公と一緒に、昔の彼を知っていくので、奇妙な形で感情移入しやすいかもしれません。
でもって、「昔の彼と今の彼は違う」という事情を知った上で、それを知らずに接する登場人物を見るのは、ドッキリの仕掛けを知った状態でハマる人を見るような楽しみがあるでしょう。

それは否定しませんし、そこを楽しめたから、最後まで見られたのですが、見終わった後の行き場のない「何か」が、こんな感想を書かせてます。

胸に引っかかっているのは「薄っぺらさ」ですかね。

学生時代、政治に対して抱いていたイメージ。
それが映像化されていた。そんな薄っぺらさ。

「消費税を上げる代わりに法人税を~」みたいな話になった際、そこで話が途切れていますが、せめて「法人税を上げたときに考えられるデメリット」もセットにしないと、政治を扱う作品として足りない。
でないと、どこかの偏ったメディアの主張を鵜呑みにしました感が拭えないし、「知っている政治知識の範囲内で描いてみました」と言われているようで、ちょっと釈然としない。
知っている範囲内で納めるというのは無難ですし、調べる時間と予算にも限りがあるでしょうから、仕方ないと言えなくもないですが……。

ラヂオの時間」のような“よく知った業界”なら、よく描けるのに、なんで政治なんかに手を出したのか。
そう思うと、惜しくもあります。

* * *

賛否が分かれそうですが、特筆すべきポイントとしては、作文がありますね。
未来への伏線的な内容のそれをもってして、「いつから記憶が戻っていたのか」という視点を加えたのは、評価したいところ。
あれを見て、フライパンのシーンが脳裏をよぎりましたが、そのシーン自体は不自然に挿入された感じがあったような……。
まぁ、途中からはダラッと見ていたので、自信は無いですが。

ダラッとした最大の理由は、アメリカの大統領が木村佳乃だったから。
日本人の血が混じっているとか、そういう設定は置いておくにしても、見た目がコスプレチックで興ざめしました。
いくらコメディのノリだからって……。
それに、総理のSPはウジャウジャいるのに、向こうは少ないし……。

私的には、WOWWOWの政治関係ノンフィクションの方が好みですね。

* * *

最後に……
あの食堂に、金を払いに行けよ。