メモ書き

****

なぜ、人は疲れるのか?

「今日も疲れた」
「もうダメだ、疲れて動けない」

人生で一度は言ってそうな言葉です。
一方で、「疲れたとか、言ってられない」みたいなことを言って、頑張ったりもする。

本当に、人間って不思議な生き物ですね。
でもって、疲れって何なんでしょう?

ちょっと考えてみました。というか、調べてますけど。

* * *

考え事をする際、よく思い浮かべる言葉があります。

『逆もまた真なり』

要素を逆転させても、同じことが成立してしまうこと。
それを少し意識してみます。
まぁ、言葉通りの意味ではなく、今回は反対を考えるってだけですけど。

* * *

「疲れ」が何かを考えるなら、それが存在しない状況を考えるのが早いです。

「疲れ」が無ければ、無限に動き続けることでしょう。つまり「休息」しない。
「疲れてやめる」という選択肢が無いので、とにかく動き続けて、体にガタが来てしまう……。

そう、行動抑制のリミッターが無いので、限界を超えて肉体を酷使し、大きなダメージを負ってしまうのです。

言うなれば、「痛み」と同じ身体の警告サイン。
痛みがあるからダメージに気づけますが、痛覚がマヒするとダメージすら感知できずに、その傷口は広がっていくことでしょう。
気づかないものは、避けようがないので。

ということで、「疲れ」の役割は想像できました。
まぁ、実際にそうなんですけど。

「疲れ」は脳からの指示であり、具体的な動きを書くなら、『elF2α』という因子が『リン酸化elF2α』という物質に変化することで産出される炎症性サイトカインによるもの……らしいです。

逆に言えば、『リン酸化elF2α』にならなければ発生しないので、これを『リン酸化elF2α阻害剤』によって妨害すれば、炎症性サイトカインは低下して疲れを感じなくなります。
そういう実験のデータがあるんですよ。

実験では『リン酸化elF2α阻害剤』を使っていますが、人間の体内には同じような働きをする『elF2α脱リン酸化酵素』がありまして、これが『リン酸化elF2α』を『脱リン酸化』させるわけです。

この一連の流れが「疲れた」から「疲れていない」への切り替わり。
こういう身体のスイッチのもと、私たちは疲れを感じて休んだり、疲れを感じずに動いたりするわけです。

* * *

「疲れ」と一緒くたに書いてきましたが、疲労には生理的疲労と病的疲労があります。
生理的疲労は休息すれば回復するもの、病的疲労は休息しても回復しないもの。

回復しないんだから、後者の方が厄介。
そう単純に言い切れないのが怖いところ。

病的疲労には反応せずに、生理的疲労に反応するウイルスがあるんですよ。
そいつ、「ヒトヘルペスウイルス 6(HHV-6)」って言うんですけどね。

正確には、HHV-6AとHHV-6Bがあるんですけど、今回 取り上げるのはBの方。

恐ろしいことに、ほぼ100%の成人の体内に、この「HHV-6B」は潜伏感染しています。
文字通り潜伏しているだけで、普段は何もしないんですけど、生理的疲労に反応すると宿主の身体から出ていこうとし、唾液中に出現するんですよ。

その際、再活性化します。
再活性化は、遺伝子がウイルスの形状になって増殖すること。

遺伝子と聞くと、人間が持つ遺伝子情報のヒトゲノムを連想しますが、これはメタゲノムのこと。
メタゲノムは、人間に寄生している細菌やウイルスの遺伝子情報も含まれます。

話を戻し、増殖後の経路ですが、鼻腔から脳の一部である「嗅球」に到達することもあるそうで、そこに潜伏したら厄介なことに。
なんと、そこで「SITH-1」遺伝子とタンパク質を産出するようになります。

この「SITH-1」は、細胞にカルシウムを流入させて細胞死を起こし、結果としてストレス因子が増加して、うつになるという……。


* * *

なんか、こうしてストレス因子とか書くと、「ストレスって、やっぱり悪い奴だな」となりますが、彼にも役割があるんですよね。

「ストレス(応答)」と「ストレッサー(ストレス源)」があるそうですが、ここではストレス応答の話をします。

不安や恐怖を感じると、人間はストレスを感じます。
そして、ストレス応答。

副腎から、ストレスホルモンが分泌されます。
コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンといったホルモン群のことです。

中でも、コルチゾールは炎症性サイトカインを抑える働きがあります。

おっと、驚きですね。
「疲れ」をもたらす炎症性サイトカインを抑えるんですよ?

疲れが抑えられたら、また動けるようになるじゃないですか。
ストレスを感じたのに……。

そう、ストレスを感じるような不安や恐怖を前にしては、「疲れたとか、言ってられない」わけです。
不安や恐怖を前に、疲れというリミッターを外し、身体は動くよう指示してくる。不安や恐怖を回避するために。

よくできていますよね。

ちなみに、まったくストレスがないということは、炎症性サイトカインを抑えるものが減った状態なので、それはそれで疲れるわけです。
「何もしていないのに、疲れた」は、ストレス応答がないために、疲労が強くなった状態かもしれませんね。

ということで、バランスが大事って話でした。
そのバランスを維持するには、適度にストレスを受け、適度に疲れる日々を送るのが良いって、言ってしまえば それだけの内容です。

 

参照サイト

jikeivirus.jp

日本疲労学会

www.hirougakkai.com