メモ書き

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「横山光輝版 三国志」の感想

横山光輝三国志」の感想です。

ebookjapanで、1~59巻が3月31日まで無料。
60巻のみ有料だったのを読み終えました。

60巻あるので、無料で59巻までいけるか。
それを気にしながらの読書となりました。

読み終えたと言っても、出師表などの文章は読み飛ばしています。
時間的にギリギリだったので。

三国志は、ファミコンのゲームを少し、吉川英治の小説、そして横山光輝版の漫画を友人宅で少し読んでいました。
まぁ、この時点で見方的に劉備よりですよね。

ただ、曹操メインの小説を読んだ気もするんです。
記憶があやふやですけど。

今回、1巻から読んでみて、友人宅で巻が飛び飛びの漫画を読んだのを思い出しつつ、いろんなことを感じました。

以下は、ネタバレを含む感想となっています。

* * *

思っていたよりも多かった要素:曹操の敗走、むむむ、旗が折れる
思っていたよりも少なかった要素:見分けのつかない顔

改めて一気読みすると、ビックリするくらい曹操が勝っていない。
よくあれで……と思えてきます。
出だしこそ、キレものの雰囲気を漂わせてますが、老いたら冴えがない。
詩の才能があってどうのとか、そういうイメージが湧かない感じ。

まぁ、勝ち戦がモノローグで語られ、1.2コマで説明終了していることも、あるんでしょうけど……。
一方で、逃げ足の早さは光っていました。
「しまった!」の次のコマでは逃げています。
「なぜだ!?」とかじゃない。ヤバいと思ったら即、逃げる。
これが生き抜くために必要な心構えですね。
「君子豹変す」ですよ。誤った判断にしがみついてちゃダメ。

でもって、「勝敗は兵家の常」です。
飽きるほど負けてる曹操なので、人の負けにも寛容。
だからこそ言える言葉かも。
要は「重要なところで、勝てばいい」んです。
それまで、負けていてもいい。致命傷にならなければ。


次に「むむむ」です。
これ、台詞なんですけど、本当に多い。
1ページに2回出るケースもあるくらい、多かったです。
続けて読んでいると、数えたくなってきます。
「むむむ」
まぁ、好きなんですけどね。

あと、旗が折れて不吉を暗示する場面。
旗だけにフラグ回収も早い早い。
星読みもですが、当たり過ぎてニュースが要らないくらいのレベル。
見慣れると、水戸黄門で印籠を出る感覚で、「おっ、来たか」という気分に。

逆に、思っていたより少なかったのは、見分けがつかない顔。
おそらく、1コマを抜き出し、誰だと問われれば、答えられない武将は山ほど。
でも、物語の流れの中では、見分けがつきます。
しばらくすると、似たようなモブ武将が出てきて、「どっかで見たような……」と思うんですけどね。

三国志の話になると、正史と三国志演義の違いがどうとなりますが、その辺は詳しくないのでスルーして、感じたことをダラダラ書いていきます。

魏・呉・蜀になるのは、35巻。
思いのほか、後でした。
劉備がなかなか土地を得ないから仕方がない。
もはや、不殺主人公を見ている気分……。

でもって、重要人物が死にまくる42~45巻。
特に42巻。
曹操関羽が同じ巻だとは思っていませんでした。

重要人物がいなくなっても、新たな魅力的な人物が出てくればいいんですけど、あまり出てこない。
特に蜀。
作中でも「蜀に人なし」とありますが、ずっと孔明のターンなので、ほぼ一人舞台です。
姜維が出てきて変わるのかと思いきや、そこまで大したことがない姜維
馬謖は、泣きながら切られるのを待つばかり。たいして活躍していない。

盛り上げてくれるのは、やはり司馬懿仲達。
孔明の罠だ」を見れて、非常に満足しました。

個人的には、南蛮平定が少し退屈……。
固い鎧、毒の沼、猛獣と、能力バトルのように対抗策を打ち出し、突破していくのは痛快ですが、敵対する孟獲に戦術はあっても戦略が無いので、国同士の駆け引きの後だと物足りなく感じてしまいます。

駆け引きと言えば、魯粛
外交において、子どものお使いと揶揄され、交渉ごとに向かない描写ばかりの人。
正史じゃ違うような声も聴きますが、交渉下手サラリーマンを見ているようで、なんか面白くなってきます。
自分も交渉下手なんで、人からは こんな風に見えるのかなと、今となっては思います。

別の意味で面白いのは、賄賂で有名な楊松ですかね。
賄賂で自在に操れるのに、その職に就けたままってどうなのよ……。
そう突っ込みたくなるほど、金に目がない人。

酒に目がない人は山ほどいますし、美女で失敗した人も多いですが、このわかりやすいくらい金に目がくらむ姿が、逆に楽しくなってきます。

反対に、不快に感じるキャラというのは、そんなにいない。
私の場合は、華佗の書を燃やしたモブ妻くらいですかね。
それだけ旦那が大事とか、そういう見方になれず、「多くの人を助けられる本を燃やすなよ。貴重な資料が……」という気持ちに。

こういうキャラに不快感を覚えるタイプなんで、像が建てられるたびに壊される劉禅とかは、あまり……。
劉禅は、割と素直な感じに描写されているので、悪意のないボンボン。そんな印象なんですよ。

* * *

一気読みした後に思ったのは、曹操が信長、仲達が家康っぽい、みたいな?
捉え方としては、ですよ。

でもって、権謀術数の世界で、よく「義」を通す者が勢力を拡大できたなと。
そこはゲーム理論的には……といったことを考えたくなったといったところ。

よく歴史ものを読むと、現代社会にあてはめ、ああだこうだと言いたくなります。
でも、実際には社会が違い過ぎて参考にならない。
共通点があるように思えても、実のところバーナム効果的に当てはまると錯覚しているんじゃないか。そんな風に思えます。

ということで、
作中の一文がよぎります。
「一冊読んだだけで、真理を悟った気になるな」とか「学問の為に学問し、議論の為に議論をする」みたいなやつです。
学びに終わりはなく、研究し続けなくてはいけない。
それを忘れて、誰かが書いた書物を読んで すべてを悟った気になっては、ダメなんだなと改めて思ったというのが、一番の感想かもしれません。

知識はあるのが凄いのではなく、活かせることが凄いのだと。